ある日突然、踊ることも声を出すことも奪われてしまったバレエダンサー・フーリア。これまでの自分が壊され、生きる意味を見失ったとき、“踊ること”が新たな声となり、彼女を明日へ連れてゆく。
潮風と砂埃を閉じ込めたような美しい映像のなかで、大地を踏みしめ、夕陽を抱く彼女のダンスは、言語の壁を超えた肉体表現として、どんな台詞よりも雄弁に私たちにその想いを訴えかける。抑圧された社会の中で、手を取り合う女性たちの関わり合いを通じて、人間の深い慈愛と湧き溢れる生命力を瑞々しく描き出し、手話とダンスで表現することの自由と美しさを力強く訴えかける。
本作を手掛けたのは第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された『パピチャ 未来へのランウェイ』のムニア・メドゥール監督。製作総指揮は『コーダ あいのうた』でろう者の俳優として初めてのアカデミー助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーが務める。主人公フーリアを体当たりで演じたのは、アルジェリア出身の期待の新星リナ・クードリ。
初夏の心地よさを想起させるような極上の一本が、きっとあなたの五感と心を解放する。