2023年4月に京都市交響楽団の常任指揮者に就任する沖澤のどかさん(35)。発表時には年齢や性別がことさら注目されたが、本人は「音楽家として女性であることを意識したことはありません」と言い切る。最短距離を歩むように見える指揮者としての道も、挫折を味わい「やめてしまおう」と悩んだこともあったという。重圧から解き放ち、成長を後押ししてくれたのは「いいものはいい」「Be yourself」という巨匠たちの言葉だった。

指揮者になったわけ
22年7月、沖澤さんの第14代常任指揮者就任が発表されると、多くのクラシックファンは「新しい風が吹いた」と沸き立った。1956年に創立された京響で初めての女性。さらに、35歳での就任は第2代、故ハンス・ヨアヒム・カウフマンと並び最年少となる。
ところが、本人に気負いはまったくない。「音楽を共有していると、年齢も性別も国籍も全く気になりませんから」
沖澤さんは87年、青森県で生まれた。幼少期からピアノやチェロを習い、小学5年から地元のジュニアオーケストラに所属。高校の吹奏楽部ではオーボエを始めた。
高校2年の冬、音大への進学を考えるようになったが、指揮者になろうとは思っていなかった。…
(以下略)