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ここは福岡市東区・志賀島の金印公園。2千年前の弥生時代に中国皇帝から授かったとされる金印が、出土したと伝わる場所だ。展望所から博多湾を望むと、約9キロ先に市街地が広がる。視線をペイペイドームや福岡タワーから少し右へ移すと、能古島がある。思いの外、湾の入り口は狭い。

公園の前に「漢委奴國王金印發光之處」と刻まれた石碑が建つ。市街地から遠く離れているのに、しばしば観光客がやって来る。「ちっちゃ~い」。展示された金印のレプリカを見て、カップルが驚いた。

国宝の金印「漢委奴国王」は、西暦57年に光武帝から贈られたとされる。印面は一辺約2・3センチ、鈕ちゅう(つまみ)を含む高さは約2・2センチ。親指の先ほどの大きさしかない。実物は、博多湾の対岸にある福岡市博物館が所蔵している。
「本物か、偽物か」。金印を巡っては、古くから真贋(しんがん)論争が続く。偽物と疑われる理由の一つに、不明瞭な出土状況がある。

発見は江戸時代の1784年。地元の農民が水田の開墾作業中に掘り出したと伝わる。海沿いの傾斜地に整備された公園を見上げて思った。確かに水田には不釣り合いな不便な土地だ。

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