DIRECTORʼS STATEMENT
この『ベイビー・ブローカー』の準備をしている日々で話を聞くことが出来た子どもたち。
彼らは何らかの理由で親が養育を放棄し施設で育ったのだが、その中の何人もが、
果たして自分は生まれて来て良かったのか?という
生に対する根源的な問いに明確な答えを持つことが出来なかった。
そのことを知って僕は言葉を失った。
この世に生まれなければ良かった命など存在しないと自分は彼らに言い切れるのか?
お前なんか自分なんか生まれなければ良かったという内外の声に立ち向かって強く生きようとしている
あの子どもたちに向けて、自分はどんな映画を提示することが出来るだろう。
作品作りの中心にあったのは常にこの問いだった。
『ベイビー・ブローカー』はまっすぐに命と向き合い、登場人物の姿を借りて、
自分の声をまっすぐに届けようと思った作品である。
祈りのような、願いのような、そんな作品である。
是枝裕和