岩波新書 「シェークスピアのたくらみ」 を読みました。

シェイクスピアのたくらみ (岩波新書 新赤版 1116) (新書) 喜志 哲雄 (著)
シェークスピアが書いた戯曲の構造を解説する本ですから、 ある程度、彼が書いた戯曲を読んでいるか、あるいは演劇を観たことがないと着いて行けません。
もちろん、こういうタイトルの本を読もうかと思う人は、全くシェークスピアが書いた戯曲に接したことがない人は居ないとは思いますが、ある意味相当なファン又はオタクでないと、意味が解らないと思います。
内容は、殆どの戯曲に及ぶもので、悲劇は単なる悲劇ではなく、喜劇も単なる喜劇ではないという、言わば二重構造の展開を説明してくれる訳です。
私は、蜷川幸雄氏のシェークスピア全戯曲公演のプロジェクトの相当部分を観ているので、解らないこともありませんでしたが、内容を殆ど忘れているものも多く、また全く知らない戯曲も紹介されていて「着いてゆけません」でした。
著者の喜志 哲雄は、シェークスピアが劇中人物と観客との間に意図して作った距離感に注目して論を進め、観客が劇中で起こるであろうことをあらかじめ知っている場合(劇中人物にとっては未来のことなので知らない)場合、または劇中人物は自らの過去を知っているが観客は知らない場合など様々なケースをそれぞれの戯曲に当てはめて解説している。
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以下は、Web上の記事の御紹介。
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「本よみうり堂」
岩波新書編集部 作品の丹念な読み解きから、ラディカルな劇作家の発見へ
シェイクスピア(1564-1616)については、その作品の紹介や成立事情、作者についての伝記的研究、上演史など、これまで山のような研究書や解説書が書かれています。
では、そうした多くの書物に付け加えられた本書の特徴とは何でしょうか。
それは、作品としてのシェイクスピア戯曲に徹底的に向き合い、読み解いていくこと、さらにそのとき、「シェイクスピアは観客をどのように操作しようとしたのか」という視点に立つということにあります。「観客を操作する」とはどういうことか、その結果シェイクスピアは観客をどこに導こうとしているのか―『ロミオとジュリエット』から『あらし』に至る作品を一つ一つ取り上げながらの読み解きの手つきは鮮やかそのものです。
本書を通じて著者は、ロマン派以来のヒューマニスティックなシェイクスピア観を排して、彼を、観客に対するたくらみに満ちた、ラディカルかつしたたかな作家としてとらえ直そうとします。演劇の手法からシェイクスピアの現代性が見えてくる、というやや込み入った,というか高級な論を展開するわけです。え、むずかしそう?
しかし、ご安心ください。日本のシェイクスピア学、演劇学界の重鎮の一人である著者の叙述は、決して難解なものではありません。40に及ぶといわれる作品のうち24作品を取り上げますが(下の目次をご覧ください)、そのすべてがおよそどんな作品で何が主題なのかを読み取れるようにみごとに工夫された書き方のおかげで、興味深く読み進めること、請け合いです。
(新書編集部 早坂ノゾミ) ■著者紹介 喜志哲雄(きし・てつお)氏は1935年生まれ。 京都大学大学院修了。英文学、演劇史専攻。 シェイクスピア学者として著名であるのみならず、ミュージカルから現代演劇まで、幅広い知見に支えられたするどい演劇論で知られる。京都大学教授を経て、現在は京都大学名誉教授。 著書 『シェイクスピアの世界劇場』(小津次郎編、1985)、 『劇場のシェイクスピア』(早川書房、1991)、『英米演劇入門』(研究社、2003)、 『喜劇の手法』(集英社新書、2006)、 『ミュージカルが「最高」であった頃』(晶文社、2006)ほかがあり、 また、ヤン・コット、ハロルド・ピンターなどの翻訳も多数。 ■目次 序 章 観客を操作するシェイクスピア 第一章 結末が分っている劇はどこが面白いか 1 『ロミオとジュリエット』は始まる前に終る 2 『ジューリアス・シーザー』の暗殺は避けられたか 3 観客を拒絶する『アントニーとクレオパトラ』 4 『リチャード三世』と史実とのずれ 5 劇の時間、観客の時間―『ヘンリー五世』の場合 第二章 喜劇の観客は何を笑うか 1 『じゃじゃ馬ならし』のヒロインは変身したのか 2 双生児という仕掛け―『間違いの喜劇』の場合 3 『お気に召すまま』と男装の恋する女 4 笑いと哀感は両立するか―『十二夜』の場合 5 『空騒ぎ』は喜劇であり、悲劇でもある 6 『ヴェニスの商人』はユダヤ人の悲劇ではない 第三章 悲劇の主人公はなぜすぐに登場しないか 1 主人公の登場以前に―『ハムレット』の場合 2 『オセロー』は嫉妬の悲劇ではない 3 登場人物と観客の距離―『リア王』の場合 4 『マクベス』の主人公は運命に挑む 第四章 不快な題材はどう処理されるか 1 『タイタス・アンドロニカス』の暴力 2 『トロイラスとクレシダ』は観客の不安を誘う 3 演劇で性欲を扱う―『尺には尺を』の場合 4 『終りよければすべてよし』は観客を挑発する 第五章 超自然的な存在はどんな役割を演じるか 1 『真夏の夜の夢』の妖精は全知全能ではない 2 「語り手」という名の登場人物―『ペリクリーズ』の場合 3 『シンベリーン』と予言する神 4 劇作家があやつる奇蹟―『冬物語』の場合 5 『あらし』の魔術には限界がある あとがき 索 引
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