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福岡県飯塚市の芝居小屋「嘉穂劇場」を運営する認定NPO法人嘉穂劇場(伊藤英昭理事長)が、経営難を理由に運営から撤退することが26日、分かった。同法人は近く理事会を開き、解散を決定する見通し。関係者は劇場存続に向けて新たな運営主体の確保を急ぎ、当面は現体制での営業を続ける。
1931年に開場した同劇場は、江戸時代の歌舞伎様式を継承する木造建築の国登録有形文化財。建物の補修や設備の更新に多額の費用が必要な上、新型コロナウイルスの影響で公演やイベントのキャンセルが相次ぎ、集客に苦慮したことが原因とみられる。
法人の2019年度の事業報告書によると、今年2月上旬から3月下旬にかけて開かれた人気イベント「ネコたちの雛(ひな)祭り」では、入場者数が前年の半数以下の約3700人にとどまった。4~6月は劇場の見学者受け入れを中止した。
関係者によると、10月に法人から市に対して支援の相談があった。市は「相談を受けたことは事実。解散が正式に機関決定されるまではコメントできない」としている。
劇場は03年7月の集中豪雨で壊滅的な被害を受けた。寄付金や助成金を円滑に活用するため、04年にNPO法人としての運営を開始。劇場主だった故伊藤英子さんの呼び掛けに演劇関係者や芸能人、市民らが支援金を寄せ、再開にこぎ着けた。17年には、寄付者が税制上の優遇を受けられる認定NPO法人になった。大衆演劇の座長が年に1度集う全国座長大会や、有名歌舞伎役者の公演などが開かれてきた。
(丸田みずほ)