昭和四十九年九月に登場して以来、松竹のドル箱的存在となった「男はつらいよ」シリーズ八作目。なお今回は二時間という大作となり、寅さんの八人目の恋人として池内淳子が出演する。脚本は朝間義隆と山田洋次。監督、撮影は前作「男はつらいよ 奮闘篇」同様、山田洋次と高羽哲夫がそれぞれ担当。
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作品データ
製作年 : 1971年(2019リマスター)
製作国 : 日本
配 給 : 松竹
上映時間 : 114分
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【映画のストーリー】 (結末の記載を含むものもあります。)
例によって車寅次郎は半年ぶりで故郷柴又へ帰ってきた。
一同は歓迎したつもりだったが、些細な言葉のゆき違いから竜造やつねと喧嘩となり、又もや旅にでることになった。
寅が去って静かになったある日、博の母が危篤という電報が入り、光男を竜造夫婦に託した博とさくらは岡山へ急いだ。博の父の飃一郎(ひょういちろう)は元大学教授で、研究一筋に生きてきた学者だった。
葬式の日、驚ろいたことに寅がヒョッコリ現われた。柴又に電話したことから、葬式のことを知り、近くまできていたから寄ったという。しかし、旅先とはいえ、派手なチェックの背広姿である。さくらは近所の人から借りたダブダブのモーニングを寅に着せ、葬儀に参列させるが、トンチンカンなことばかりやってその場をしらけさせてしまう。
岡山で生涯生活するという飃一郎を一人残して毅、修、博の兄弟は去っていくが、飃一郎の淋しい生活に同情した寅は一度は去った諏訪家に戻ってくる。ひょう一郎も、自分のこれまでの人生をふりかえって、人間らしい生活をするよう寅に語った。
秋も深まった頃、柴又「とらや」で皆が集まって寅の噂をしているところに、題経寺山門の近くに最近開店したコーヒー店の女主人六波羅貴子が挨拶に来た。
この美人を見て一同は身震いした。もしこの場に寅が居合わせたらどうなることか、と考えたからである。しかも、何たる不幸か、寅はその日帰ってきたのである。みんなの予感は摘中し、寅は貴子に身も心も奪われて、そのまま柴又に滞在する仕儀と相成った。
貴子には、学という小学校四年になる男の子があった。学は自閉症的な性格のうえに、新しい学校にも馴染めず、貴子も心を痛めていた。しかし、学は寅にすっかりなつき、明るく元気になった。貴子は寅に感謝した。
そして寅の、貴子に対する思慕はますます高まり、三人一緒に生活する夢まで見るようになった。その頃、さくらや竜造たちは、寅がいつ又失恋することかとハラハラ見守っていた。
みんなが、そろそろ二枚目が現われて例によって失恋する時分だと話しているところに寅が帰ってきて、旅に出るために荷物をまとめだした。寅は、心配するさくらに「いくら馬鹿な俺だって潮時ってものを考えてるよ」といい残すとどこへともなく旅だっていった。
【キャスト・スタッフ】
役 名 : 配 役
車寅次郎 : 渥美清
車竜造 : 森川信
車つね : 三崎千恵子
誠訪博 : 前田吟
諏訪さくら : 倍賞千恵子
源吉 : 佐藤蛾次郎
梅太郎 : 太宰久雄
御前様(日奏) : 笠智衆
六波羅貴子 : 池内淳子
六波羅学 : 中沢祐喜
諏訪飃一郎 : 志村喬
諏訪毅 : 梅野泰靖
諏訪修 : 穂積隆信
諏訪咲江 : 上野綾子
労務者 : 谷村昌彦
坂東鶴八郎 : 吉田義夫
大空小百合 : 岡本茉利
製 作 : 島津清
企 画 : 高島幸夫、 小林俊一
原 作 : 山田洋次
脚 本 : 山田洋次 、 朝間義隆
監 督 : 山田洋次
撮 影 : 高羽哲夫
音 楽 : 山本直純
美 術 : 佐藤公信
照 明 : 内田好夫
録 音 : 中村寛
スチール : 堺謙一
編 集 : 石井 巌
助監督 : 立仙雅巳