***************
音楽教室訴訟 東京地裁判決について(声明文:PDF)
音楽教育を守る会 - 2020年2月28日
令和2年2月28日
報道機関各位
音楽教室訴訟原告および弁護団
音楽教育を守る会
音楽教室訴訟 東京地裁判決について
(東京地裁平成29年(ワ)第20502号、同第25300号)
音楽教室事業者249名および個人の音楽教師2名が原告となり、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)に対して、「音楽教室における演奏については著作物使用にかかわる請求権がない」ということの確認を求めた訴訟について、本日、東京地方裁判所において、原告らの請求をいずれも棄却するとの判決が言い渡されました。
これまで、音楽教室のレッスンにおける演奏については演奏権が及ばないということを強く主張してまいりましたが、誠に遺憾ながら、原告団の主張は認められませんでした。これから、判決文の内容を弁護団とともに十分に確認し、控訴に向けて準備を進めて参ります。
まずは、3 月 4 日に臨時総会を開催し、控訴の方針を決議し、改めてその結果をお伝えいたします。
※令和2年3月5日(木)10時より、司法記者クラブにて記者会見を予定しております。
「音楽を学ぼうとする生徒が、楽器を弾けるようになるために行う毎回の練習や、生徒の上達をサポートするために教師がお手本を示すことについてまで著作物使用料が発生するというのは、社会一般の感覚とあまりにかけ離れているのではないか。」
原告団は、このような素朴な疑問から、音楽教室のレッスンからの徴収に反対の意を示し、本件訴訟の提起に至りました。
音楽教育に関わる多くの方々が、我々と同じ疑問を持たれており、JASRACによる音楽教室からの徴収の動きに反対する署名活動では、約57万筆のご賛同をいただきました。
著作権法上、演奏権が及ぶのは、「公衆に直接聞かせることを目的」とした演奏に限定されています(著作権法22条)。
1名の教師と1名または数名の生徒で行われるレッスンでの演奏が、「公衆」に対する演奏であるとは到底考えられません。
また、生徒が練習のためにする演奏や、教師がお手本を示すための演奏が「公衆に直接聞かせることを目的」とした演奏であるとも考えられません。
従来の裁判例では、カラオケスナックでの歌唱やカラオケボックスでのカラオケ装置の再生演奏について、事業者による演奏権侵害が認められていますが、カラオケの事案と、音楽教室で音楽を学ぶために生徒がする演奏とは、演奏の態様も目的も全く異なるのですから、両者は同じに扱われるべきではありません。
JASRACは、音楽教室のレッスンで行われる演奏について、受講料収入の2.5%の使用料の徴収をしようとしていますが、そのレッスンで使用されるテキストや教材に対してはすでに著作物使用料を支払っています。さらにそのレッスン成果を公に発表する場(発表会)でも使用料を支払っています。さらにレッスン時の演奏についてまで使用料を徴収することは、日本の音楽教育を担う音楽教室事業を衰退させ、日本の音楽文化の発展を阻害する重大な問題です。
真に音楽文化の発展を考えるのであれば、教育の場で生徒が学習のためにする演奏であることや、民間の音楽教室における音楽教育の重要性について十分な配慮がなされなければなりません。それが音楽の裾野を広げ、ひいては権利者のみなさまの利益にかなうこととなるはずです。
原告団は、日本の音楽教育および将来の音楽文化の発展を守るべく、引き続き、音楽教室のレッスンにおける演奏については演奏権が及ばないことを強く主張してまいります。
以 上
**************
「音楽教室の楽曲も著作権の使用料必要」教室側敗訴 東京地裁
NHKニュース - 2020年2月28日 23時49分
ピアノ教室などのレッスンで使われる楽曲の著作権をめぐり、使用料の請求の対象となった音楽教室などがJASRAC=日本音楽著作権協会を訴えた裁判で、東京地方裁判所は使用料を請求できるという判断を示し、教室側の訴えを退けました。音楽教室での著作権をめぐる初めての司法判断で、全国の音楽教室に影響を及ぼすとみられます。
楽曲の著作権を管理しているJASRACは、おととし4月以降、レッスンで楽曲を使うピアノなどの音楽教室についても使用料の徴収の対象にしています。
これについてヤマハ音楽振興会など、およそ250の音楽教室の運営会社などは「音楽文化の発展を妨げるもので許されない」などとして、JASRACを訴えました。コンサートなど公衆の前で楽曲を演奏する場合、著作権法に基づいて作曲者などへの使用料が発生しますが、裁判ではレッスンでの演奏が公衆に聞かせる演奏に当たるかどうかが争われました。
28日の判決で東京地方裁判所の佐藤達文裁判長は「楽曲を利用しているのは、生徒や教師ではなく事業者である音楽教室だ」と指摘しました。
そのうえで「生徒は、申し込んで契約を結べば、誰でもレッスンを受けられるので不特定多数の公衆に当たる」として、JASRACは音楽教室に使用料を請求できるという判断を示し教室側の訴えを退けました。
音楽教室での著作権をめぐる初めての司法判断で、全国の音楽教室に影響を及ぼすとみられます。
教室側「大変残念 おそらく控訴」
訴えを退けられた原告団の代表で「音楽教育を守る会」会長の大池真人さんは「たくさんの支援をいただき、『守る会』も作って2年かけてやってきましたが、大変残念です」と判決の受け止めを話したうえで、「来週に原告としての意思を決めますが、おそらく控訴になるかと思います。57万人の署名もいただきましたので、もう一度しっかり主張をアピールしていこうと思います。もう一度力を合わせて、音楽教育での著作物の利用をもっと円滑にすることや、どうやったらもっと演奏人口を増やしていけるかということについて声を広めて、引き続き適切に闘っていきたい」と今後への思いを話していました。
【JASRAC「全面的に認められた」】
JASRACは、判決のあと記者会見を開き、世古和博常務理事が「これまでの著作権管理業務を通じて培った判断が全面的に認められた。営利を目的で音楽を利用しているところから対価が還元されていないのはおかしいということが、判決で示されたのだと思います」と判決の受け止めについて述べたうえで「今後は教室事業者の理解が得られるよう取り組みを進め、創作者への対価還元を通じて音楽文化の発展に努めていきたい」と話しました。
また音楽教室側が控訴を検討していることについては「非常に残念だ。すでに使用料を支払っていただいている教室事業者もいるので、改めて協議の要請があれば応じていきたい」と話していました。
【専門家「著作権範囲広げた判断 音楽文化に大きな影響】
著作権をめぐる法的な問題に詳しい福井健策弁護士は「今回の判決では、たとえ1対1のレッスンであっても、あくまで音楽教室を経営している事業者が演奏の主体だと述べている。さらに、生徒についても、音楽教室と契約する時点を基準にして『公衆』にあたると指摘していて、著作権が及ぶ演奏の範囲について、これまでよりもかなり広く解釈した判断が示されたといえる」と分析しています。
そのうえで「音楽に触れる入り口といえる音楽教室でも著作者の許可が必要になるということがはっきりと示されただけに、今後の音楽文化に大きな影響を与える判決となった」と話しています。
判決のポイントは2つの争点
音楽教室のレッスンで使う楽曲でも著作権の使用料が必要かどうかが問われた今回の裁判。
【大きく2つの争点がありました】
1つ目の争点は、音楽教室での演奏が公衆に向けたものといえるかどうかです。楽曲を公衆の前で演奏したり再生したりした場合、著作権法に基づいて作曲者などへの使用料が発生します。
このためコンサートでの演奏や結婚式場のBGMは公衆に向けたものとして著作権を管理するJASRACなどに使用料を支払う必要があります。
今回の判決では、音楽教室での演奏について「楽曲を選んで利用する主体は生徒や教師ではなく事業者である音楽教室だ」と指摘しました。
そのうえで「音楽教室の生徒は申し込んで契約を結べば誰でもレッスンを受けられるので、音楽教室からみて不特定多数の『公衆』に当たる」と判断しました。
2つ目は、音楽教室での演奏が「聞かせることを目的としているか」どうかです。
著作権法では「聞かせることを目的とした演奏」が保護の対象となりますが、これが何を意味するのか、条文の解釈が争点になりました。
これについて音楽教室側は「聞かせることを目的とした演奏とは聞く人に感動を与えるための演奏だ」として、生徒が練習するための演奏は保護の対象ではないと主張しました。
しかし判決は「演奏が『感動を与える目的』かどうかは演奏する人の主観に踏み込まなければ判断できず、抽象的かつあいまいだ」と指摘しました。
そのうえで「音楽教室の教師や生徒自身が演奏技術を向上させるため、聞かせることを目的に演奏していることは明らかだ」として音楽教室側の主張を退けました。
音楽に触れる入り口といえる音楽教室でも楽曲の使用料が必要になるという今回の判決は著作権に基づく保護が及ぶ範囲をこれまでより広げるもので、今後の音楽文化に与える影響が注目されます。
***************
JASRACの著作権料徴収認める 東京地裁、音楽教室敗訴
日本経済新聞 - 2020年2月28日 20:47更新
日本音楽著作権協会(JASRAC)が音楽教室から著作権使用料を徴収すると決めたのは不当として、音楽教室を運営する約250事業者がJASRACに徴収権限がないことの確認を求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。佐藤達文裁判長は教室側の主張を退け「使用料は徴収できる」との判断を示した。
音楽教室側は控訴する意向を示した。
著作権法は「公衆に聞かせる目的」で楽曲を演奏する権利(演奏権)について、作曲家などの著作権者が持つと規定する。JASRACはこれに基づき、2018年から音楽教室に対し著作権使用料の徴収を始めた。
訴訟では音楽教室での演奏が(1)「公衆」に対する演奏に当たるか(2)「聞かせること」を目的とした演奏といえるか――が争われた。
佐藤裁判長は判決理由で、音楽教室は継続的・組織的にレッスンを行っており生徒数は多いと指摘。申し込めば誰でも受講できることとあわせ「生徒は不特定多数の『公衆』に当たる」と判断した。さらに、技術向上のため教師が生徒に演奏を聞かせることは「聞かせることを目的とした演奏に当たる」として、著作権使用料を徴収できると結論付けた。
JASRACは使用料を年間契約の場合で受講料収入の最大2.5%としている。ただ、実際に支払い契約を結んでいるのは20年1月末時点で全国約770事業者のうち10事業者にとどまる。
原告側は判決を受けて「レッスン時の演奏にまで使用料を徴収するのは音楽文化の発展を阻害する」との声明を出した。 JASRACの世古和博常務理事らは判決後に「適切な判断。丁寧に説明し(契約)手続きを取ってもらえるよう進めていきたい」と話した。訴訟が続く間は原告団に加わる音楽教室などには督促しない考えも示した。
著作権問題に詳しい福井健策弁護士は「判決は公衆への演奏という概念を広く捉え、指導や練習も演奏権の対象と判断した。ただ教室での練習を通じて楽曲のファンが広がることもあり、運用を厳格にしすぎると著作権者側にマイナスの影響もありうる」と話した。
***************
音楽教室側が全面敗訴 レッスンでも著作権料
―JASRACの主張認める・東京地裁
JIJI.com(時事通信) - 2020年02月28日18時04分
日本音楽著作権協会(JASRAC)が全国の音楽教室からレッスンでの楽曲演奏について著作権使用料を徴収することは不当だとして、ヤマハ音楽振興会など約250の教室事業者が、同協会に請求権がないことの確認を求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。佐藤達文裁判長はJASRAC側の主張を全面的に認め、教室への請求を正当と判断、原告側の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
著作権法は「公衆に聞かせるために演奏する権利」を保護対象としており、訴訟では(1)音楽教室の生徒が「公衆」に当たるか(2)技術向上のためのレッスンが「聞かせる目的」での演奏と言えるか―が主な争点だった。
佐藤裁判長は「音楽教室では、受講契約を結べば誰でもレッスンを受けられ、受講した生徒は多数存在する」と指摘し、「生徒は不特定かつ多数の公衆に該当する」と判断。原告側の「特定の少人数を相手にレッスンしている」などとする主張を退けた。
その上で、生徒向けの実演などが「聞かせる目的の演奏」に当たるかを検討。原告側は「著作権法で問題となるのはコンサートなどで聞き手に感動を与える演奏。レッスンの目的は技術の伝達や確認」と訴えたが、判決は「外形的、客観的に他人に聞かせる意思があれば足りる」と述べ、音楽教室の演奏でも使用料が発生すると結論付けた。
判決後、取材に応じたヤマハ音楽振興会の大池真人常務理事は「大変残念で遺憾。判決文をしっかり読んだ上で、恐らく控訴する」と述べた。
JASRACの世古和博常務理事は「これまでの著作権管理業務で培った判断が全面的に認められた。事業者の理解が得られるよう取り組みを進め、業界の発展に努めていく」と話した。
***************
音楽教室で演奏の著作権使用料めぐる訴訟
JASRACが勝訴 東京地裁
毎日新聞:巽賢司 - 2020年2月28日 13時42分
「ヤマハ音楽教室」をはじめ、音楽教室を運営する全国約250の個人・企業・団体が、日本音楽著作権協会(JASRAC)を相手取り、音楽教室で演奏される曲の著作権使用料を徴収できないことの確認を求めた訴訟で、東京地裁(佐藤達文裁判長)は28日、音楽教室側の請求を棄却し、JASRAC勝訴の判決を言い渡した。
JASRACは、作曲家らから楽曲の著作権の管理を委託され、楽曲の使用料を集めて分配する一般社団法人。2003年以降、使用料についてヤマハなどの音楽教室側に協議を申し入れていたが合意が得られず、17年2月に徴収する方針を公表した。年額支払いの場合は、年間受講料収入の2・5%を使用料とするとした。
反発した音楽教室側は「音楽教育を守る会」を発足させ、17年6月に今回の訴訟を起こした。17年7月には、徴収に反対する約55万人分の署名を文化庁に提出した。
JASRACによると、徴収の対象としているのは全国773事業者。訴訟の原告となっている事業者からは判決が確定するまで徴収しない方針。訴訟に加わっていない10事業者からは既に使用料の徴収を開始している。
【巽賢司】
****************
音楽教室、著作権料で敗訴 JASRACに徴収権限
共同通信 - 2020/2/28 18:14 (JST)
音楽教室でのレッスン演奏を巡り、楽曲の著作権使用料を支払う義務があるかどうか争われた訴訟の判決で、東京地裁は28日、「著作権法上、支払いの対象だ」と判断した。その上で、作曲者らの委託を受けた日本音楽著作権協会(JASRAC)を相手取り、使用料の徴収権限がないことの確認を求めた教室運営者側の請求を棄却した。教室側は控訴する方針。
JASRACによると、徴収は個人教室を除き、全国約700の事業者が開設する約7千の教室が対象。今年1月末時点で徴収額は年間60万円にとどまるが、契約が進めば最大10億円になると見込んでおり、判決が及ぼす影響は大きそうだ。
****************
JASRAC勝訴、音楽教室での演奏にも「著作権料の徴収権」認める 東京地裁
弁護士ドットコム - 2020/2/28 13:34配信
音楽教室での演奏をめぐり、ヤマハ音楽振興会など音楽教室が、JASRAC(日本音楽著作権協会)に著作権使用料の徴収権がないことの確認をもとめた裁判で、東京地裁(佐藤達文裁判長)は2月28日、請求棄却を言い渡した。
JASRACは2017年2月、音楽教室で、教師や生徒が管理楽曲を演奏することについて、著作権使用料を徴収する方針を示した。一方、ヤマハ音楽振興会など音楽教室は「音楽教育を守る会」を結成。音楽教室側は同年6月、東京地裁に提訴していた。
ヤマハ音楽振興会など原告は、音楽教室で教師や生徒が演奏することは、(1)「公衆」に対する演奏ではなく、(2)コンサートやライブのように「聞かせることを目的」としていないので、著作権法の「演奏権」が及ばないと主張していた。