2017年8月14日(月)
今日の西日本新聞の社説です!
何故、文学作品がテーマに? と思って読んだら 「南京大虐殺」に触れた作品だから。
私は、村上春樹さんの作品は、殆ど読んでいない。
なので、村上春樹作【騎士団長殺し】 が「南京大虐殺」を 扱った小説であることは、この社説を読むまでは 全く知らなかった。

「戦場では人は何にでもなる」 西日本新聞社説 ー 2017年08月14日 10時32分 https://www.nishinippon.co.jp/nnp/editorialist/article/350730
村上春樹さんがこの春に発表した長編小説「騎士団長殺し」(全2巻)は、歴史の暗部と向き合うことを読者に求める作品である。
登場人物の学生は20歳で徴兵されて1937年の南京攻略戦に加わり、復学した後に自殺する。遺書には、上官に命令され、軍刀で捕虜の首を切らされた経験などがつづられていた。
この学生が所属したのが、勇猛果敢で名をはせた熊本第六師団という設定である。
まるで通過儀礼のように、新兵に銃剣で捕虜を殺させる場面は、79年に刊行された元兵士の証言集「揚子江が哭(な)いている-熊本第六師団大陸出兵の記録」(創価学会青年部反戦出版委員会編)にも登場する。
死が常に身近にある戦場の最前線だ。「気も荒くなり、また、敵愾(てきがい)心も増す(中略)民間人に対して、さらには赤ん坊にまで目をそむけたくなるような仕打ちをしていく」
「殺すのがあたりまえという感覚」から「ただ殺すのはおもしろくない、少し変わった殺し方を」と思うようになったという証言もある。
私たちは、米軍による空襲や被爆の体験を語り継ぎ、新事実を掘り起こして、記憶の風化にあらがってきた。今後もたゆまぬ努力が必要だ。
一方で、朝鮮半島や中国における日本の加害の記憶は、深く国民に共有されているとは言い難いのではないか。
責任はマスコミにもあるだろう。例えば第六師団の南京戦に触れた本紙の記事は、この30年間で数本しかない。
私にも苦い体験がある。
駆け出し時代、中国で戦った元兵士を取材した。捕虜殺害などの話を聞いたが、記事になることを家族が拒み、掲載を諦めざるを得なかった。
「戦場では人は何にでもなる」という元兵士の言葉は、今も忘れられない。
戦争はごく平凡な市民を、時には女性や子どもにもおぞましい暴力を加える残酷な兵士に変えてしまう。その恐ろしさから目を背けては、反戦・平和の道は歩めないと改めて思う。
=2017/08/14付 西日本新聞朝刊=
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