民主、共産、維新、社民、生活の野党5党が、昨年9月に成立した安全保障関連法を廃止する法案を衆院に共同提出した。同法が「憲法違反」だというのが廃止法案提出の理由である。
この動きに注目したい。同法成立から5カ月が経過し、今国会の焦点は経済政策や閣僚のスキャンダルに移っている。そうした中、安倍晋三政権は3月下旬に安全保障関連法を施行する方針だ。廃止法案提出を契機に、国会であらためて安全保障に関わる論議を活性化させるべきである。
集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法については、前国会での審議中、多数の憲法学者が「憲法解釈の変更で許される範囲を逸脱しており、違憲」と指摘した。しかし、安倍政権は国会で「数の力」を頼り、国民の疑義を押し切って同法を成立させた。
成立直後に共同通信社が実施した世論調査では「国会で審議が尽くされたと思うか」との問いに「思わない」の回答が79%に上った。本来なら秋の臨時国会で引き続き論議すべきだったが、安倍政権は憲法の規定に基づいて野党が求めた臨時国会を開かず、結果的に安保論議を避けてしまった。
この間、内閣法制局が憲法解釈変更の内部検討の経緯を公文書として残していないという不可解な事実も明らかになっている。
今回、民主党と維新の党は廃止法案提出に先立ち、領域警備法案など3法案を提出している。政府の安保関連法の対案となるものだ。これも十分論議に値する。
一般に野党提出法案は与党多数の国会ではたなざらしにされることが多く、審議入りさせるのは難しい。しかし、今回は早く実質的な審議を行い、いまだに国民の不信が強い安保関連法の問題点をただす機会とすべきである。与党も安保関連法に自信があるのなら、堂々と審議に応じるのが筋だ。
このまま安保関連法が施行されれば、「憲法違反」と疑われる法律に基づいて自衛隊が実際の活動を始めることになる。それでいいのか、と政府や与党に問いたい。