2015年11月28日(土)
きょうは、中洲大洋にて 朝10時から MET LIVE 【タンホイザー】 を見ました。 上映時間、二回の休憩含み四時間半!
【タンホイザー】は、ワグナーの初期の作品 だということですが、 相当複雑な音楽構成です。 若気の至りというかテンコ盛りと云うか・・・ 意欲的に取り組んだことが良く解ります。 そして、やはり凄い!
筋書きとしては、エロスの女神・ヴェーヌス(英語読みではヴィーナス)の魅力に 取り込まれて現実社会を忘れて愛欲に逃避している タンホイザー を 現実世界の姫・エリザベートが救い出せるか? と云う話し。
 タンホイザー(上) と エリザベート(下)
ナビゲーターのスーザン・グラハムの解説を字幕で「官能の愛」と「真実の愛」 と書いてあったが、スーザン・グラハムは「官能の愛」を 『Erotic Love』 と言い 「真実の愛」を 『True Love』 と言っていたと思います。
冒頭の有名な序曲は、オペラの序曲としては超長く25分ほどもあります。 その序曲が半分ほどまでは、オケピットでの演奏風景が写し出されています。 そして序曲の半ばに差し掛かったところで、オペラカーテンが斜めに引かれ 現れた光景は、「ヴェーヌス・ベルク」 での 『乱交場面』!
「ヴェーヌス・ベルク;Venus Berg」 は、愛欲の女神『ヴィーナスの村』 のイメージ。 『町』 とかではなく、やはり 『村社会』。 (ドイツ語の Berg は「山」を意味するが・・・ 『ヴィーナスの山』では雰囲気が違う) バレエダンサーとバレリーナ十数組が、セックス・シーンを舞台全面で展開。 但し、衣装はミュージカル 【ミス・サイゴン】 のような『下着衣装』ではなくて、 露出度はさほど多くない衣装を着てはいるのですが・・・
尤も、数十年前にベルリンドイツオペラ引越し公演でみた【モーゼとアロン】 みたいな露骨なセックス描写ではなくて、バレエの振り付け的表現ですが・・・
そのバレエ的振り付けですが、舞台には山道のような急傾斜の荒れた道が 造作してあり、その上を走り回ったり飛んだりする『危険な振り付け』あり・・・ また、バレエ的セックス描写としての各種のリフト(男性が女性を持ち上げる) あり、難しいポーズ(身体の屈曲)あり、中々バレエ・ダンサーとしては大変な アクロバットでした。

そして、そのシーンが、序曲が終わっても数十分続くので、体力的にも大変!
バレエ団の主な出演シーンは第1幕の、このシーンのみです。 (何人かは、第3幕の回想シーンで出てきますが・・・)
そして、第1幕の そのシーンが終わる処で、タンホイザーとヴェーヌスに スポットライトが収束し、歌い始めるのですが、ヴェーヌスの歌い出しは、 これぞメゾ・ソプラノと云う深く味わい深い声でした。 これに対してタンホイザーはタイトルロールなので、やはりテノール。 二人共、昔風のグラマラスでお腹の出た配役です。 上手いのですが、舞台の遠目ならともかく、MET LIVE のアップにはちょっと・・・
どこにも紹介が無いのですが、第1幕の途中で出てくる牧童(ソプラノ)は 日本人のような東洋の女性でしたが、スリムで可愛かった! 第1幕のカーテンコールには牧童も出てきました!
第2幕では、あの有名な 『タンホイザー大行進曲』 があり、 トランペット・ファンファーレは舞台の神殿のバルコニーで演奏されます!

第3幕では、現実世界に戻ってきたタンホイザーが社会に馴染めず 再びヴェーヌス・ベルクに戻るかどうかと云う葛藤が延々と描かれるので しばしば居眠りに陥りました (笑)
メトロポリタン・オペラの音楽監督・ジェイムズ・レヴァインは現代世界有数の ワグネリアン(この場合ワーグナー指揮者)で、車椅子上で指揮。 各幕(第1・第2・第3幕)前に大歓声と拍手を浴びていました。
MET LIVE 【タンホイザー】 公式サイト による作品紹介 官能の闇に迷い込んだ騎士歌人の恋人に、ひたむきな愛を捧げる領主の姫君!ヴァルトブルク城に伝わる伝説にヒントを得たワーグナーの傑作が、ライブビューイングに初登場!MET音楽監督J・レヴァインのもと、明るく豊かな美声を誇るJ・ボータら現代屈指のワーグナー歌手が結集!有名な〈前奏曲〉の旋律で歌われる幕切れの〈巡礼の合唱〉は圧倒的。ドイツ中世を再現したO・シェンクの名舞台で、「愛」を問う歌合戦が始まる! 13世紀のドイツ、テューリンゲン地方。吟遊詩人でもある騎士タンホイザーは、領主ヘルマンの娘エリーザベトと愛し合っていたが、官能に憧れて愛の女神ヴェーヌスが支配するヴェーヌスベルクへ赴き、愛に溺れる日々を送っていた。やがて愛欲に倦んだタンホイザーはヴェーヌスベルクから人間世界に舞い戻るが、「愛」をテーマにしたヴァルトブルク城の歌合戦でタブーである官能の喜びを歌い上げ、非難を浴びる。ヘルマンはタンホイザーに、贖罪のためローマへの巡礼を命じるが・・・。
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《役 名》 : 配 役 《タンホイザー》 : ヨハン・ボータ Johan Botha 《ヴォルフラム》 : ペーター・マッテイ Peter Mattei 《エリーザベト》 : エヴァ=マリア・ヴェストブルック Eva-Maria Westbroek 《ヴェーヌス》 : ミシェル・デ・ヤング Michelle DeYoung 《ヘルマン》 : ギュンター・グロイスベック Günther Groissböck
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写真は【タンホイザー】 を見た後、行き付けの『利花苑』 で食べた 『プルコギ・ランチ』900円

肉たっぷりで900円は安い! 食べる前に写すのを忘れて、食べ掛けです!
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【今日の運動】 今日のスポーツクラブ 【ESTA】 での運動は・・・ 水中歩行 : 500m 水泳・各種 : 500m
そのあと・・・ 『香椎ESTA温泉』 で入浴。 サウナも。
歩数計: 5700歩

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MET OPERA 公式サイトより 《タンホイザー》現地評のご紹介 2015年11月19日木曜日
レヴァインは、オーケストラから雄大で深く豊かな演奏を引き出した。METは本作に現代屈指のキャスト陣を集結させている。
主役のタンホイザーを演じるヨハン・ボータは高く響き渡る声で、驚くほど軽々とこの難役を歌い上げた。彼の歌声は、若者の憧れの心を表現しつつも、タンホイザーの魂が危機を迎える場面では、その絶望と戸惑いをひしひしと感じさせた。バスのギュンター・グロイスベックは、テューリンゲンの領主でエリーザベトの叔父であるヘルマンを、力強く威厳に満ちた歌声で演じた。さらに本プロダクションでは、エリーザベトを愛する騎士、ヴォルフラム役として、スウェーデンの名バリトン、ペーター・マッテイも登場する。 2013年のMET新演出《パルシファル》のアンフォルタス役で圧倒的な演唱を見せつけたマッテイは、高潔なヴォルフラム役でも同様に、迫真の演唱を披露した。彼の歌声は、無理のない自然な力強さと、甘美な響きを共に兼ね備えていた。これほどまでに優雅な〈夕星の歌〉を聴けるとは、想像だにしない。 ―ニューヨーク・タイムズ
ヴェーヌス役のメゾソプラノ、ミシェル・デ・ヤングは官能的で艶のある力強い歌声で歌いあげ、彼女自身まさにその役を楽しんでいるかのようだった。ヴェーヌスベルクの場面では、彼女とボータの張り詰めた集中力が相互に作用し合い、彼女の役を掌握する力は、ボータに匹敵するものだった。
そして舞台上で最もパワフルな歌声を聴かせてくれたのは、エリーザベトを演じたソプラノ、エヴァ=マリア・ヴェストブルックだ。アリア〈崇高な殿堂よ〉のオープニングではGの音が、オペラハウスいっぱいに響き渡った。彼女の歌声は、メゾソプラノのような豊潤さと、ソプラノの輝かしい響きを合わせ持ち、彼女の歌声という楽器は、オーケストラピットを含めたどの楽器よりも、夜通し存在感を放っていた。 ―ニューヨーク・クラシカル・レビュー
《タンホイザー》みどころ 東条碩夫(音楽評論) 2015年11月20日金曜日 観客が等しく胸を締めつけられる感動のラスト! 官能の女性ヴェーヌスと、純愛の女性エリーザベト━━この2人の女性に惹かれ、彼女たちの間を揺れ動く詩人騎士のタンホイザー。深層心理的に言えば、これは1人の女性の両側面を象徴する性格ともいえるだろう。そしてタンホイザーは、「清らかな愛をもつ女性」に救われて死んでゆくのだ。これは、ワーグナーの作品にしばしば見られる、「女性による救済」の、ひとつの典型例なのである。 今回の上演では、ワーグナー自身が後年に円熟の筆致で改訂した、いわゆる「パリ版」楽譜が使用されているので、2人の女性の世界が、さらに明確になる。特に第1幕での官能の世界ヴェーヌスベルクの場面が長くなっているため、魅力的なヴェーヌス(ミシェル・デ・ヤング)の存在が際立つだろう。この場面でタンホイザー(ヨハン・ボータ)が肉欲の女神を讃える歌は、序曲にも現われている。
オペラでは、各幕それぞれの中でタンホイザーが2人の女性の間を彷徨うことになるのだが、ワーグナーがそれをまた実に鮮やかに音楽で描き分けているのだ。「(聖母)マリア!」あるいは「エリーザベト!」の一言で場面や状況が大転換するあたりにも注意をはらおう。
聴きどころは、山ほどある。 まず、「パリ版」の特徴として、有名な序曲の途中から熱狂的なバレエ(「バッカナール」)に切り替わる。この版ではバレエ場面も長いため、それも愉しめるだろう。ジェイムズ・レヴァインが率いるMETのオーケストラの演奏の壮麗さも聴きものだ。
豪華な舞台の第2幕では、冒頭にエリーザベト(エヴァ=マリア・ヴェストブルック)が高らかに歌う「歌の殿堂」がまず聴きものだ。ここでは純な少女というより、意志の強い大人の女性といった雰囲気の歌唱表現だろう。また第2幕では、有名な「大行進曲」ほかで、METの合唱団の底力が愉しめる。
第3幕では、まずエリーザベトが絶望して神に祈る「エリーザベトの祈り」、次に詩人ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ(ペーター・マッテイ)が歌う有名な「夕星の歌」、そしてタンホイザーが呪わしいローマ巡礼を回想する長大な「ローマ語り」━━と、聴きどころが続く。特に「ローマ語り」は、話の内容に関連する音楽のモティーフが次々にオーケストラに現われるという形が採られ、ワーグナーののちの作風を予告する。ボータが全力で凄味を利かせるところだ。 そして、死せるタンホイザーに救済が告げられるラストシーンで、壮大に巻き起こる有名な「巡礼の合唱」は、観客が等しく胸を締めつけられる感動の瞬間であろう。
この上演に今シーズンの全てをかけた感のあるMET音楽監督レヴァインの指揮が素晴らしい。「序曲」や第2幕と第3幕の序奏の個所で映し出される彼の入魂の指揮ぶりを見ていると、大METは40年近くにわたってこの人に支えられて来たのだという感慨、そして病を克服して復帰した彼が、これまでになかったような音楽の高みに到達しているのだという感慨が、沸々と湧き上って来る。 演出は、オットー・シェンクである。「ばらの騎士」や「ニュルンベルクのマイスタージンガー」をはじめ、数々のトラディショナルな美しい舞台を創って来た人だ。この「タンホイザー」でも、極めて写実的な光景が繰り広げられる。謎解きが要るような読み替え演出が大嫌いな人たちや、「タンホイザー」を初めて観る人たちには、安心して楽しめる舞台だろう。
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テーマ:音楽映画
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