2015年1月7日(水)
 作家の宮尾登美子さん死去=「一絃の琴」「藏」、88歳 (時事通信) - 2015年1月7日(水)18:21
作家の宮尾登美子さんが死去 「鬼龍院花子の生涯」「櫂」「天璋院篤姫」など (産経新聞) - 2015年1月7日(水)16:17 「鬼龍院花子の生涯」や「天璋院篤姫」などの小説で知られる作家で、文化功労者の宮尾登美子(みやお・とみこ)さんが昨年12月30日、老衰のため死去していたことが7日、分かった。88歳だった。
高知市生まれ。昭和20年に満州(現中国東北部)に渡り、21年に帰国。満州の収容所生活の極限状態を書き残そうと、作家を志した。37年に「連」で婦人公論女流新人賞を受賞したが、作家として花が開かず、長い下積み時代を過ごした。
48年に生家の家業である芸者紹介業や両親を題材にした「櫂(かい)」で太宰治賞を受賞、本格的にデビューする。54年に「一絃の琴」で直木賞を受賞した。以来、女性画家の上村松園がモデルの「序の舞」(吉川英治文学賞)、ベストセラーとなった「蔵」など、時代や因習に翻弄されながらも、芯の通ったりりしい女性を描き、多くの読者を魅了した。
また、「寒椿」「鬼龍院花子の生涯」など数多くの作品が舞台化、映像化された。「宮尾本 平家物語」と「天璋院篤姫」はNHK大河ドラマになり、人気を博した。20年に菊池寛賞を受賞。
平成元年に紫綬褒章、21年に文化功労者。
■映画監督・降旗康男さんの話「気さくで撮影現場がお好きな方でした。『藏』の撮影中、音楽を担当したさだまさしさんを紹介したら、とても喜んでいたのが印象に残っている。生きのいい女性を主人公にした小説を楽しみにしていたのでとても残念です」
■ ドラマ「蔵」などに出演した女優、松たか子さんの話「テレビドラマ、舞台で宮尾先生の描き出した人物達に出会えたことは、素晴らしい体験でした。心より、ご冥福をお祈り申し上げます」
<宮尾登美子さん死去>濃密な文章、情感豊かに (毎日新聞) - 2015年1月7日(水)19:19 女性たちの生きる姿を追い続けた作家、宮尾登美子さんが88歳で亡くなった。2008年、ベッドから落ちて背骨を痛めてから、徐々に執筆から遠ざかり、13年7月、文芸誌に発表した「柝(き)の音の消えるまで 追悼市川団十郎丈」が最後の原稿となった。同年夏から体調を崩して療養を続けていたが、次女環さんによると、先月30日夜、静かに息を引き取ったという。

【評伝】
生家の「芸妓娼妓(げいぎしょうぎ)紹介業」が、宮尾さんの大きな十字架だった。高等女学校の入試で県立に落ちたのは、家業のせいとうわさされた。早く家を出たかったため私立の女学校卒業後、高知市を離れ山間部の代用教員になり、17歳という若さで結婚。
しかし、作家への道をこじ開けてくれたのもまた、忌み嫌った家業だった。
婦人公論女流新人賞でデビューして約10年、ことごとくボツの憂き目にあっていた。「小説は面白く書けばいいと思っていたが、自分自身と血を吐く思いで向き合って書かないといけなかった」。そうして生まれたのが、生家をモデルにした「櫂(かい)」だった。それからはベストセラーを連発。読者はドラマチックな宮尾文学に魅了されていった。
アイデアは10年でも、20年でも長い時間温める。いよいよ向き合っても、例えば「一絃(いちげん)の琴」なら琴を取り寄せることから始まる。1日の執筆量は原稿用紙数枚。それ以上書くと、「内容が薄くなる」。共に上京してくれた元高知新聞記者の夫との生活も大事にした。こうして紡いだ小説からは情感がにおい立ち、文章の密度は濃い。執筆に9年かかった「櫂」は、“手織りの木綿のような文章”と評された。
次に出したい小説の種があった。それは「櫂」「朱夏」「春燈」「仁淀川」と書き継いできた自伝的小説の続きだった。「私のことだから書くとなっても10年くらいかかる。どうなりますことやら」。そう言って笑ったのは08年のこと。宮尾さんには時間が足りなかった。【内藤麻里子】
作家、林真理子さんの話 先生の大ファンなのでとてもショックです。日本古来の女性が好んだ物語文化の継承者だったと思います。親との絆、男と女、家と女の確執など、女性読者のDNAを刺激するものをたおやかで流麗な筆さばきで描き出し、何ともいえない味わいがあった。女性誌で宮尾先生の評伝の連載を今年始めるため、昨春、あいさつに行きました。「林さんになら何でも話すわ」と言って、近いうちにまた会うことになっていたのに。
映画「櫂」などに主演した女優の十朱幸代さんの話 だいぶ以前のことになりますが、映画と舞台でも宮尾先生の作品に巡り合い、演じられたことは、今女優として生きていくうえで、とても大きな力になっております。大変残念です。ゆっくりお休みください。
◆宮尾登美子さんの主な作品
◎○「櫂」1973年
◎○「陽暉楼」76年
◎ 「寒椿」77年
◎ 「岩伍覚え書」77年
○「一絃の琴」78年
◎○「鬼龍院花子の生涯」80年
◎○「序の舞」82年
○「天璋院篤姫」84年
○「春燈」88年
○「松風の家」89年
◎○「藏」93年
○「天涯の花」98年
○「宮尾本 平家物語」2001~04年
○「義経」04年
※◎は映画、○はドラマの原作
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