2011年3月21日(月・春分の日)
木下恵介監督の 【喜びも悲しみも幾年月】 (1957年公開)
のリバイバル上映 を 昨日、【MET LIVE VIEWING】 に続いて 見ました。
去年の年末に亡くなられた 高峰秀子さんを追悼する企画でもあります。
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私が子どもの頃、父母か祖父母に連れられて見に行った覚えがあります。
私が、まだ5・6歳の頃なので、
「おいら 岬の 燈台守は 妻と二人で 沖行く船の 無事を祈って 灯をかざす」
という主題歌と、回転する灯台のフレネルレンズのイメージ
そして、長いカットの「気の狂った女」のイメージだけが記憶に残っています。
しかし、今回の上映を見ると「気の狂った女」(映画では「気違い」と表現)のカットは
短いワンシーンだけでした。 子ども心に「強いショック」だったのでしょう
先輩燈台守の妻が、厳しい環境に耐えかねて精神的な疾患に陥ったという想定でした。
また驚いたことに、白黒映画という記憶でしたが、1957年というのにカラー映画でした。
当時はカラーフィルムは超高級だったでしょうから、フィルム代だけでも相当金の掛かった
映画だったようです。
また、全国の灯台をロケで回り、航空写真(動画)も数多く使うなど、この面でも
金の掛かった斬新な映画だったようです。 その上2時間40分と当時としては超大作!
舞台は、全国各地の灯台(海上保安庁管轄)、主人公は灯台に勤務する海上保安官と
その家族。 主演は、佐田啓二と高嶺秀子。 若かりし日の田村高廣や中村加津夫も。
時代は、上海事変が勃発した昭和7年から、中国侵略戦争・太平洋戦争、敗戦を経て
昭和32年(この映画の公開の年;すなわち当時のリアルタイム)までの25年間。
さすがに、木下恵介監督の映画だけあって、随所に戦争を反映しています。
映画が始まって昭和7年という字幕が出て間もなく、灯台の近所の庶民が「万歳」を
叫んでいるところが映し出され、それが日本軍の「上海陥落」を喜ぶ民衆の姿である
ことを明らかにします。
映画の中では、柳条湖事件 盧溝橋事件 南方諸島の陥落 本土への空襲と機銃掃射
そして、空襲と機銃掃射の中で数多い「燈台守」が殉職することが字幕で紹介されます。
もちろん、監督の原点でもある「原爆」もストーリーの中で短く紹介されています。
本筋の方は、短期間に北海道から長崎沖の西海まで全国を転勤(25年に10回ほど?)
し続ける燈台守たちとその家族の愛と生き様を紹介するものでした。
なお、今風に云う『音の風景』が殆ど無くて、燈台守の話ゆえ常に海岸近くの話
なのに、波の音も風の音も殆ど録音されていないので、いかにもスタジオ・アフレコ
の感じがありありでした。
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高峰秀子追悼 心あたたまる夫婦ドラマ 木下恵介監督「喜びも悲しみも幾歳月」 2010年末に、日本を代表する名女優、高峰秀子の訃報が伝えられた。 昭和映画史に燦然と輝く巨星がまた一人鬼籍に入ってしまうのは寂しいことである。そこで高峰秀子の代表作と言うことで、多くの主演作品の中から、木下恵介監督「喜びも悲しみも幾歳月」を紹介してみたい。
高峰秀子主演による木下恵介監督作品は、1951年の「カルメン故郷に帰る」、1954年の「二十四の瞳」そして1957年の「喜びも悲しみも幾歳月」が三大名作と言えるだろう。
どの作品も、基本的には「悪人」は登場せず、娯楽作品ではあるが変に観衆に媚びたりせず、それでいて芸術や様式美といった高尚なものを追求するでもない。安心して見ていられるのだ。
そして、見終わった後味がさわやかなのも印象がよい。
「喜びも悲しみも幾歳月」は、灯台守として全国各地の灯台を転々とする、いわゆる転勤族夫婦の苦労物語である。
転勤族の苦労というのは、そうでない人から見れば想像を絶する過酷なものである。
やっとその土地に馴染んで、顔見知りもできたころに転勤となり、別れを告げながら新しい土地に馴染まなければならない。
夫は、仕事を中心に生きているから、転勤をそれほど特別なことだとは思わないが、支える妻のほうは大変である。
もちろん、夫婦げんかだってするし、愚痴も言う。それでも支え合って生きている夫婦の姿が健気である。
年代的には、昭和初期から昭和30年代までという、いわば昭和前史を回顧するような構成になっているとともに、全国各地の灯台でロケを敢行したロードムービーという一面もある。
なにより、「ゲゲゲの女房」ブームで、夫を支える妻の姿が見直されている現在、「喜びも悲しみも幾歳月」における高峰秀子演ずる妻の健気さは、若い世代にも共感を得るのではないだろうか。
ラストシーンで、娘が嫁いだ先の夫の海外赴任により外国へ向かう船に向かって、灯台の灯りをともして見送る姿は、さわやかな感動を呼ぶことは間違いないだろう。
なお、高峰秀子の作品として見た場合、どこか物足りないというイメージはつきまとうかもしれない。
高峰秀子独特の台詞回しと魅力ある"不機嫌顔"があまり見られないからだが、そうした点を考慮しても、21世紀に改めて見直したい夫婦のドラマとしてぜひご覧いただきたい作品である。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)
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テーマ:日本映画
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