2011年2月24日(木)
今週末から上映予定の メトロポリタン・オペラ
【ニクソン・イン・チャイナ】 のご紹介です。
MET 初演ということで、もちろん私も見たことがありません。

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MET 【Nixon in China】 公式サイト (英語)
松竹・「MET Live Viewing」 公式サイトから
【ニクソン・イン・チャイナ】
【ニクソン・イン・チャイナ】のみどころ
プリンシパルを務めるバレエダンサー “瀬河寛司さん” 特別インタビュー
☆1972年2月のニクソン訪中の際の資料写真。 オペラの舞台セットや演出と比べてみると…とても興味深いです
MET上演日:2011年2月12日 NY現地時間 日本上映:2月26日~3月4日
〈作曲・指揮〉ジョン・アダムズ 〈演出〉ピーター・セラーズ 〈キャスト〉 ニクソン大統領役:ジェイムズ・マッダレーナ(バリトン) パット・ニクソン役:ジャニス・ケリー(ソプラノ) 周恩来役:ラッセル・ブローン(バリトン) 毛沢東役:ロバート・ブルーベイカー(テノール) 江青(毛沢東夫人)役:キャスリーン・キム(ソプラノ)
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1972年2月、北京郊外の飛行場にニクソン大統領が降り立った。毛沢東主席との会談が始まり、饒舌な主席の弁はニクソンを圧倒していく。 愛国的な晩餐会ではお互いの国の平和に対して盛大な乾杯が行われ、翌日は“思想的”で“ハリウッド的”でもあるバレエを鑑賞する。 毛沢東の妻による、欧米文化や“ブルジョワ的”なものを徹底的に排していく姿勢で作られたバレエは、またもニクソン夫妻にいいしれぬ感情を芽生えさせていく。そうした北京での日々を過ごし、彼らは果たしてその最後の夜に何を思ったのか?そして両国の和解への道は?
今や世界的神話―― 東西冷戦時代、ニクソン=アメリカ資本主義と、毛沢東=中国共産主義の歴史的邂逅を通じ、人間の真実を探求したJ.アダムズの代表的オペラだ。
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24年も前のこと、オペラ雑誌に《Nixon in China》の名を見つけた筆者は、その余りに散文的なタイトルに目を剥いた。でもすぐに、「こんなことまでオペラになる??」と興味が湧いた。それゆえ、本作が米国内でテレビ放映された折、当時会社員の筆者は、現地駐在の先輩にビデオ録りを頼んだのである。
やがて、海を越えて映像が届き、筆者が瞠目したのは作曲家アダムズの容赦ない音作りであった。ハーモニーは耳にすぐ馴染むが、果てしなく繰り返すリズムパターンのもと、毛沢東や江青夫人が猛烈に高い音程を歌い続けるのである。この二人の歌声には、自らの考えを何が何でも貫く要人たちの「頑なさ」が見事に投影されていた。
それから十数年の後、今の仕事に就いた筆者は、出張先のニューヨークで本作の楽譜を手に取った。奥付を一瞥したところ二版を重ねている。いっとき話題になってもなかなか再演されないのが現代オペラの常。「増刷がかかるのは人気の証」と思い購入した。そして開いたオーケストラ編成表の頁に、筆者は三たび目を剥いた。弦楽器の挺数まで指定される一方で、いくら探してもホルンは見当たらず、代わりに「サクソフォン4本」「ピアノ2台」という突飛な要求がなされていたからである。 今年1月、ライブビューイングの予告編に登場したアダムズは、この楽器編成を「ニクソンが育った時代に相応しいジャズの響き」と種明かしした。今回のMET初披露では指揮台にも立つ彼。良き仲間の演出家セラーズと共に選んだキャスティングには、初演にも参加したマッダレーナ(ニクソン)、カナダ出身の人気バリトン、ブローン(周恩来)、コロラトゥーラの新星キム(江青)といった実力派が集う。本作上演への期待は実に大きいのである。
国際紛争が頻発する今日、このオペラが炙り出す権力者たちの「素顔」はまさに興味深いもの。ある者は権力の座から滑り落ち、ある者はその人徳を今も讃えられ、ある者は獄死 ― オペラ《ニクソン・イン・チャイナ》は、こうした人々の「その後」を知る皆様にこそ、深く味わって頂けることだろう。 岸 純信(オペラ研究家)
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テーマ:クラシック
- ジャンル:音楽
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