2009年7月11日(土)
いつものトリアス久山では上映していないので、 糟屋郡の 【ワーナーマイカルシネマ】 に初めて行った。
館内は、比較的キレイで落ち着いた感じである。
トリアスでは各スクリーンへの入り口が分散していて、それぞれの入り口で チケット確認(いわゆるモギリ)をやっているのに比べて、 こちらは一箇所のモギリを通過したあとメイン通路を進むと その左右に各スクリーンへの入り口が連続して配置してあり、 解り易く且つ何故か期待感を起こさせる配置である。
小説やコミック版はベストセラーになっており、さらに土曜日の午後というのに、 2週目を迎えたばかりの 【蟹工船】 の観客は僅かに7名。

松田龍平、西島秀俊 という今や若い人々に人気の俳優が出ているのに、何故だろう?
映画のエンドクレジットでは、原作・小林多喜二 とはなっているが、 細部の筋書きは小説とは、随分異なるようである。
ただ、基本的流れには敬意を払っているようである。 ① ただ、こき使われるばかりで、それを自らの命運と信じ込んでいる労働者たち。 こき使うのは資本家の“手先”現場監督・浅川(西島秀俊)。 ② 同僚の死から、このままでは殺される。 どうすれば良いのかと悩む。 ③ 資本家は船は装備などは確かに金を掛けて準備しただろう。 しかし、この船が帰ると莫大な利益を上げる。 では、その利益はどうして生み出されるのか? 確かに蟹はこの下に何億匹といるだろう。 しかし、俺たちが働かなければ一匹の蟹も手に入れることはできない。 と、「労働が価値を生む」「搾取と剰余価値」について松田隆平扮する 漁夫・新庄が解り易く説明する。 ④ 血判書(今風に言えば署名)を集め、ストライキに立ち上がる。 リーダーは新庄。 団結の旗は、歯車の中に握手する三つの手 「労・農・漁民同盟の象徴か?」 
⑤ 浅川はあっさり要求を認める振りをしながら海軍の出動を求める。 ⑥ 海軍の干渉によりストライキは失敗。 浅川は新庄を射殺。 ⑦ 再び漁夫や工員をこき使う浅川。 ⑧ リーダーを決めなければいいんだ。みんながリーダーだ。 そして 映画は一人ひとり職場放棄をする労働者を映し出しながら終わる。 「もう一度」 というナレーションと伴に・・・
上で振った番号は単に便宜的なもので、映画のコマ割りには関係ありません。
映画の描かれ方は、50年前の 【蟹工船】 (山村総監督) とは全く異なり、 部分的にはコミカルにも描かれていますが、上記③で書いたように搾取の本質 については、きっちり説明されていました。
また古い映画との違いは、蟹を水揚げするシーンは無い変わりに、 船内で蟹を茹で、解体し、選別し、缶にいれ、缶を密閉し、箱詰めするまでの 「蟹工船」としての工程を象徴的に描いていました。 また、こき使われる姿を描くため、この工程は何度も描かれる。
さらに、その加工・工程が人力で行われていることを強調するために、 大きな歯車の組み合わせを工員が身体の力を振り絞って動かすシーンも 何度も描かれている。 まさに人が蟹工船という機械工場の歯車であることを象徴している。

さらに、廃棄カゴに捨てられる蟹の残骸が、次々と人を使い捨てにする 現在の資本主義の『えげつなさ』をも象徴しているようであった。
 蟹工船 - goo 映画
公式サイトは、<http://kanikosen.jp/>
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goo映画による 【作品解説・紹介】 カムチャッカ沖。蟹を缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内では、出稼ぎ労働者たちが安い賃金で過酷な労働を強いられていた。少しでも手を抜くと監督・浅川の容赦のない暴力に晒されてしまう。労働者たちは仲間の1人・新庄の言葉に従って自殺しようとするも、結局死ぬことすらできなかった。そんなある日、新庄と塩田は漁の最中に博光丸とはぐれてしまう。そして冬の海で寒さに凍える彼らを助けたのは、ロシアの船だった……。
プロレタリア文学の金字塔である小林多喜二の小説「蟹工船」を、監督・SABU、主演・松田龍平で映画化。名作に息づく思想を生かしつつ、時代の変化に即した“現代の蟹工船”を作り上げた。過酷な条件で働く労働者たちが立ち上がるまでの軌跡をソリッドな映像で描いていく。松田龍平は労働者の先頭に立つ男・新庄を序盤は飄々と、終盤には熱い想いをたぎらせる演技で表現。それに対する監督・浅川を演じた西島秀俊の狂気に満ちた演技は見事だ。SF世界のように描かれた蟹工船内の美術も秀逸。狭い船内が舞台の作品ながらSABU監督作らしく“走るシーン”も盛り込まれているので、監督のファンは注目だ。
【スタッフ・キャスト】監督・脚本:SABU
原作:小林多喜二
出演 松田龍平 西島秀俊 高良健吾
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テーマ:日本映画
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